スター☆ラミィ
スター☆ラミィ

2005年、日本で新しいゲームが誕生した。それがスターラミィ。元はイスラエルに古くからある「ラミィ」というゲームで、ルールも地域によりさまざまだったが、1980年には「ラミィキューブ」としてルールを確立し、ゲーム大賞に選ばれている。

ラミィキューブは、配られるタイルの運だけでは簡単に勝てない。運と戦略と集中力が勝負のカギ。オランダでは家庭への普及率がほぼ100%といわれている、ヨーロッパでは超有名なゲームだ。日本で例えるならマージャン、といったところか。ところが日本では全く、といっていいほど知名度は低い。どうも日本では「ゲーム」=「子供の遊び」と決め付けられている節がある。ところがラミィは小さな子供には少々難しいし、いわゆる「オタク」のゲーマーが好む種類のものではない。故に日本でラミィを嗜む大人は、ほんのひとにぎりなのだ。しかしこのラミィ、大人でも充分に楽しめる、というより大人が本気でできる熱いゲームなのだ。

14枚のタイルを持ってスタートし、「グループ」と呼ばれる同じ数字で違う色3枚以上の組合せ(たとえば101010)と、「ラン」と呼ばれる同じ色の続き数字3枚以上の組合せ(たとえば456 など)を作っていき、手持ちのタイルを早くなくした人の勝ち。ただし、最初にタイルを出す際に限り、「ラン」、または「グループ」(何組でもかまわない)の数字を足して「30」以上にならないとタイルを場に出せない。

以降、手番には一枚のタイルを引くか、タイルを出すなら何組でも、何枚でも出してもいい。ここまで説明すると、たいていの人は「あぁ、マージャンと一緒ね」とか「7ブリッチと同じだね」と言う。ここでにやりと笑って「いいえ、ここからがこのゲームの面白いところなんですよ」と続ける。場に出された「グループ」や「ラン」は、3枚以上の組み合わせでできている限り、自由に組み替えてよいのだ。・・つまり(111213)(101112)(13.1313)と場に出ていて、手牌に(101013)とあったとしよう。手牌の(13)はそのままでも(13.1313)のグループに加えられるが、更に(13131313)から(13)を(101112)へ加え(10111213)とし、更にここから(10)を抜き、手牌の(1010)と組合せ、(101010)とする。こんな芸当ができちゃうのだ。

持ち時間は手番につき1分。1分以内なら何枚動かしてもかまわない。しかしこの組み換えも、最初の30点以上の組合せができないとできないのだ。パズルのように次々と組み替えられ、自分の手番までに出せるタイルが出せなくなったり、逆に出せるようになったり、集中して場を見ていないと、勝利を見逃してしまう。イライラしながら手番を待ち、難解であればあるほど、タイルをおききったときの興奮と快感はたまらない。

さて、通常ラミィでは赤・青・橙・黒の4色の113を各2組とジョーカー2枚、合計106枚のタイルを使用するのだが、これはつまりトランプセットを2組+ジョーカー2枚ということになる。ここに目を付け、スター☆ラミィではラミィではただ4色の数字だったタイルをトランプの《?ダイヤ/橙・?ハート/赤・?スペード/黒・?クラブ/青》と置き換え、さらに《スター/緑》を加えて5色で構成している。これに各カラーのジョーカーを1枚ずつと、オールマイティジョーカーを1枚加え、合計136枚のタイルで構成されている。実はこの136枚という数が大切なのだ。なぜならこれはマージャン牌と同じ枚数なのである。何を隠そう、スターラミィは自動卓で競技することを目的に作られたゲームなのだ。

初めてラミィを体験したとき、そのゲームの面白さには惹かれたものの、ゲームを始める前の準備に閉口してしまった。・・・「106枚の(薄い)タイルを7枚ずつ山にしていき、最後にあまった1枚のタイルを任意の場所に置く」・・面倒くさい、積みにくい、しかも7枚って半端だなー、おまけに1枚余る?任意の場所ってどこよ??・・・しかもラミィではスタート時に2山ずつ14枚を手持ちにするのだが、「どの山をとってもよい」のだ。「これじゃあ簡単に積み込みできるじゃん!」と言ったら、毎年オランダで行われる世界大会でも、平気で積み込みを行う、有名な坊やがいるそうで、後は個人の問題、なのだそうだ。思わず、「そんなあ」とつぶやいてしまった。まじめな人がバカを見るのは許せない。そんなのゲームじゃない!正義感が強く、日本人の典型のような合理主義の私は、そのとき既に「なんとか全自動卓でプレイできないかなあ・・」と考えていた。

そこで帰るとすぐに、全自動卓のシェアではNO1のマツオカメカトロニクスに相談した。「卓の牌の枚数設定を変更すればいいだけだから、そんなに難しくないと思いますよ。まぁ、とにかくやってみますよ。」と、快く引き受けてくださった。出来上がりを今か今かと楽しみに待ちながら、身近な人にラミィを広げる毎日となった。

さて、いよいよ卓の設定が出来上がり、牌はとりあえずそのままトランプの図柄をマージャン牌の上に張って試した。さすがにトランプの絵のままでは小さくて見にくい。それ以外に問題はなく、ゲームのスタート時のスピードも上がり、「ずる」もできなくなった。あの薄っぺらいタイルよりずっと動かしやすいし、これなら高齢者だって、障害者だって、子供だって、簡単に楽しめるじゃないか!

しかし、しばらくすると、全く違う面で、つまりラミィのゲーム自体に多少の問題が見えてきてしまったのだ。ラミィの熟練者とやればやるほど「牌を場に出さない」のが、常識であり、それが勝利のカギになっていることに気付いたのだ。場の牌と手元の牌のバランスを考えて、止めてしまうのだ。ほとんどの人が最初の30点を出したきり、ラスト7〜8枚くらいになるまで、数枚しか出さない。ころあいを見計らって、一気に出して「ハイ、上がり」という感じだ。これではつまらない。ラミィで一番面白い「組み換え」がほとんどできないではないか。はっきり言って配牌による運の要素がかなり強くなる。ジョーカーなど出してしまったら、だれかに上がりをプレゼントするようなものだ。手牌がたくさんあればあるほど、組合せはできやすい。だから余計にみんなが警戒して出さなくなるのだ。さて、どうしたらみんなが牌を出すのだろう?ここからしばらく苦悩が続いた。

しかし結果は意外なところから簡単に生まれた。トランプで遊んでいて、うっかりマークを間違えて出したことに始まり、トランプを5色に増やし「21世紀のトランプ」として新しいゲームができないか、という発想だった。そのアイデアはそのままラミィに当てはめられた。4色に比べ、5色は「グループ」ができやすい。ここまではよかったのだが、ジョーカーを2枚加えると、枚数が奇数になってしまい、どうにもよくない。しかし1枚しかないとジョーカーを持っている人が断然有利。「じゃあ、その色にしか使えないジョーカーを1枚ずつ入れたらどう?」このカラージョーカーがすばらしい効果を発揮した。

試しのプレイを3回とやらないうち、みんなの眉間にしわが寄り始めた。「なんだ、これ?どう使ったらいいんだ?」「うぅ、このジョーカー使えない・・。」ジョーカーなのに色指定されているため、「グループ」に同じ色の数字が入るとはずさなければならず、同じ色でなければ「ラン」も作れない。5色になって、手牌は同じ色が配られる可能性は下がってしまった。カラージョーカーはよく姿を見せるが、ジョーカーのくせになんとも使いにくいのだ。オールマイティのジョーカーが輝いて見える。しかし、もし最後までジョーカーを持っているとマイナス点が高い。ならば使えるうちに出してしまえ、とばかりにみんなが手牌を出すようになった。

組合せができやすいからゲームがラミィより早く進む、早く進むからジョーカーを手元にとめて置けない。ゲームとしての出来上がりは大成功だ。たった1色増やしただけ、ルールはカラージョーカー以外、何も変わっていないのに、スターラミィはラミィとは全く違うゲームになったのだ。

さて、このスター☆ラミィ、マージャン牌と同じ枚数になったおかげで、マツオカメカトロニクスの全自動卓をお持ちの方ならば、マージャン牌と取り変えるだけですぐに遊べるのだ。ルールはマージャンと違って「役」を覚える必要もないし、もともとお年寄りや障害者の方、小さな子供の訓練にならないか、と考えたゲームなので、とても簡単。特にマージャンができる方ならば、とっつきやすいと思う。ぜひ一度試してみていただきたい。夢に出るほどハマる人も少なくないと思う。

さて、冒頭のラミィキューブは3年連続、世界チャンピオンとの座を守っているのが桑原正人さん、女性初の世界大会入賞者が内藤美樹さん、共に日本人なのだ。お二方とも同世代、「数学に強い日本人」の証拠のようで、なんだかとってもうれしい。

特に桑原さんは、世界大会でダントツの強さを誇っており、その強さに各国からルール変更を望む声が上がったため、ラミィキューブの販売元であるイスラエルのレマダ社もやむを得ず対応したが、それでも見事、優勝をさらった人だ。ラミィに少しでも詳しい人の中では、彼は「世界大会のルールを変えさせた男」と呼ばれているのだ。

また、桑原さんには、まだできたての全自動卓でのプレイを試していただき、「いかにもこの発想が日本人らしいなぁ」と苦笑されてしまったが、使いやすさにはお墨付きをいただいた。かといって世界の舞台がすぐに全自動卓になる、ということはないだろう。

いつかラミィキューブに変わり、スター☆ラミィが世界のステージに登場する日を夢に見て、子供にゲームを教える毎日だ。